センター長から


九州大学のグリーンファルマ構造解析センターは、薬学研究院が推進してきたシステム創薬リサーチ構想において、既存の承認薬の適応拡大(育薬エコファーマ)と、地球環境にやさしい薬の合成(グリーンケミストリー)を融合させた『グリーンファルマ』創薬研究を加速化させるため、令和4年1月に竣工しました。 その目的は、我が国の死亡率7割を占める三大死因疾患(がん、脳心血管疾患、感染症)を克服するため、世界最先端のクライオ電子顕微鏡による構造解析学研究(構造と機能解析)を推進し、革新的な医薬品・診断マーカーの迅速かつ効率的な開発を行う『アカデミア創薬拠点』を形成し、国際共同研究を通じて研究及び教育のグローバル化を目指します。

薬学研究院では、創薬科学と臨床薬学の両輪で、産学官連携創薬育薬共同研究を加速化するため、世界最先端のクライオ電子顕微鏡による構造解析学研究(構造と機能解析)を推進し、その研究成果を広く社会に還元するとともに、薬学に関する最先端の学術情報を提供する目的を遂行するための研究施設として、グリーンファルマ構造解析センターが令和4年1月に竣工しました。 そして、それを運営する組織として、グリーンファルマ構造解析センターを令和4年4月1日付けで設置しました。

既存の承認薬を新たな新薬候補として迅速かつ安全に適応拡大するための育薬研究(エコファーマ)と、地球環境に優しい薬の合成(グリーンケミストリー)を融合させた『グリーンファルマ』創薬研究から得られた成果(革新的医療技術の原石)を社会実装するために必須となる構造解析学研究(構造と機能解析)を、産学官で連携して推進します。 次世代創薬の中核となるのは、タンパク質間相互作用を阻害する低分子化合物の探索における、標的タンパク質と特異的に相互作用する化合物の同定です。 独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)」に採択され、最新型のオートローダと電子直接検出器を備えた高性能クライオ電子顕微鏡が導入されました。 これを契機として、原子レベルの分解能でタンパク質複合体の立体構造解析を迅速に行える環境を整備することで、九州大学のクライオ電顕共用施設として九州・中国・四国地域に測定機会を提供することができ、地域偏在解消に大きく貢献できます。 また、並行して、学生・女性・若手研究者を「くすりのプロ」として育成し次代を担う人材の育成を進める予定です。

クライオ電子顕微鏡(クライオEM)は、2017年にノーベル化学賞が授与され、革新的な技術として注目されています。 クライオEM解析は、生体高分子複合体を近原子分解能で構造解析できるため、従来のX線結晶構造解析法やNMR法では解析困難であった高難度の生体高分子複合体にも使用されます。 結晶化を必要とせず、解析の効率化と、結晶化の難しい細胞内タンパク質の立体構造解析なども実現し、化合物デザインの成功確率の向上が期待されます。 クライオEMの導入は、創薬研究に必須となる、標的タンパク質と結合した新薬候補化合物分子の立体構造解析を目的とします。 また受容体と薬物リガンド間の結合様式を正確かつ迅速に解明できるため、構造情報に基づいた創薬標的分子の探索に貢献いたします。 九州・中国・四国地域で初めてクライオEMを導入することにより、地域偏在解消に大きく貢献し、立体構造解析に基づく化合物デザインの精緻化を強化し、成功確率を上昇させ、低分子、中分子および抗体など幅広い創薬研究の加速化を目指します。

グリーンファルマ構造解析センターは、病院キャンパスの東門地下鉄入口付近に建設されているグリーンファルマ研究所の後方に設置されております。 振動や磁場に配慮し、装置の安定稼働を追求した専用の建物を新たに設計・建設し、「建物一体型」のクライオ電子顕微鏡施設として高精度の解析が可能となっております。 今後、世界の人々に役立つ優れた医薬品が誕生していくことを期待します。